『沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか』
去年の秋頃に、飲み会で不毛地帯の話になって、壹岐正のモデルが瀬島龍三って人でね…ってこの本を教えてもらって、最近読み終わったので、とりあえず感想。
サブタイトルに「瀬島龍三とは何だったのか」ってあるから、伝記的なものかと思って読み始めたけど、瀬島龍三が話題の軸にはあるんだけど、その周辺の人達への取材を通じて、当時のエリート集団だった大本営参謀本部がどのようにして戦争への道を進んで行ったのか/戦後どのような人生を歩んだのかってのがメインな本。
瀬島龍三は大本営参謀本部作戦課の参謀として働いていたわけなんだけど、その「作戦課」っていうのが、『陸軍士官学校卒のエリート五百人のうち一割が陸大に進み、さらにその一割の五、六人の成績優秀者だけが卒業時に天皇陛下から軍刀をもらい、軍刀組と呼ばれる』、軍刀組出身者で占められた、エリート中のエリート集団で、それなのにも関わらず、物量では全然敵わなそうな英米と無謀な戦争に突入してしまった。それはなんで?って話になって、きっかけは、日本の南部仏印進駐なんだけど、その時の当時の参謀達の証言が面白い。
「七月の南部仏印進駐で止まると思ってたが、それから先はあれよあれよという感じ。危ないと思っても、あれをやれ、これを書けと言われてるうち作戦を成功させることで頭がいっぱいになった」とか、
「あの時、正面切って戦争に反対できたかというと、それはできなかった。家族を三人も四人も抱えて食べさせていかなければならない。上官が作戦を計画しろと言えばやらざるをえん。」とか、いかにも日本人っぽくないですか?
自分はあんまし日本史(特に近現代史)とか全然詳しくないんで、太平洋戦争なんて向こう見ずの軍部が勝手に起こしたもんだとばっかし思ってたんだけど、実はそうでもなくって、本当は頭良いはずの人達が、建前とか面子とか色々な事情で仕方なく戦争という選択肢をとってしまったのだなあって思って、面白かったです。
- 作者: 共同通信社社会部
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1999/07/28
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